こんにちは、タカオです。
あなたは、コテンラジオをご存じすか?
本記事は【歴史を面白く学ぶコテンラジオ_COTEN RADIO】をシーズン毎にまとめ、紹介している記事になります。
耳だけでは理解しづらかったという人やもっと知りたくてリピート再生している方に向けて、視覚的に理解できるようテキストでまとめているのでおすすめです。
そして、約2時間16分(1エピソード#当たり平均17分)を記事にまとめているので、これからコテンラジオデビューしたい人や迷っている人は試しに読んで見て下さい。
※タカオは皆さんと同じ視聴者の1人で、コテンラジオを応援する者です。
【今回紹介しているのはこちら】本編YouTubeで公開しています。
動画で確認したい方はどうぞ
収録の様子が見られるので、普段はPodcastで聞いている方は動画で見るのも面白いかもしれません。
シーズン毎にテキストでまとめているので気になる方はコチラをどうぞ
♦シーズン1 吉田松陰♦
♦シーズン2 スパルタ♦
♦シーズン3 コミュニケーション史♦
♦シーズン4 天皇♦
♦シーズン5 キングダムSP 秦の始皇帝♦
♦シーズン6 諸葛孔明♦
♦シーズン7 世界三大宗教♦
♦シーズン9 フランス革命♦
♦シーズン10 ガンディー♦
♦シーズン11 アレクサンドロス大王♦
♦シーズン12 お金♦
♦シーズン13 三蔵法師・玄奘♦
♦シーズン14 高杉晋作♦
今回のテーマは「ヒトラー」になります。
独裁者としてのイメージが強いヒトラーについて、彼はどんな人生を歩んだのか、そして世界にどんな影響を及ぼしたのかといったところに触れながら学びます。
勉強という意味では悲惨な歴史を知ることには価値があると思いますが、今回の内容は、人の生死や争いなど、心が破滅的に暗くなる内容になっています。ご注意下さい。
映像記録が比較的残っている時代になるので、そちらも紹介しています。客観的に歴史を学び事実として心に刻みたい人は映像も確認することでより深く学びや得るものがあるのでは無いかと思います。
1. #39 独裁者ヒトラー!破滅へのカウントダウン(約14分)
2. #40 ヒトラー、30歳・無職・自称芸術家(約18分)
3. #41 ヒトラー。開花する演説の才能(約19分)
4. #42 ヒトラーが弱小政党ナチスに加入したわけ(約14分)
5. #43 ヒトラー・民主制が生んだ独裁者(約18分)
6. #44 そしてヒトラーは救国の英雄となった(約12分)
7. #45 ホロコーストの悲劇・使命感でユダヤ人を虐殺したヒトラー(約21分)
8. #46 晩年は薬物中毒・ヒトラーの最期(約20分)
9. 感想
9. 参考文献
10. 最期に
#39 独裁者ヒトラー!破滅へのカウントダウン(約14分)
- ヒトラーはオーストリア人であり、ドイツ人では無かった。
- ヒトラーは政治家というより、芸術家基質の偏屈者。実績が無いのに首相になってしまう.
- ヒトラーは30歳まで落ちこぼれのニートで家族のすねをかじっていた。
- 第一次世界大戦とその経験がヒトラーの人生に多大な影響を与えた。
- ヒトラーの自己確信力と怒りによるエネルギーの扱いは極めて優れていた。
ヒトラーの人生について
ヒトラーは1880年頃に、オーストリアで生まれます。
厳密にはオーストリアとドイツの国境付近でドイツに超近い所ですが、オーストリアで生まれており、その後に引っ越したりしているわけです。
以下に、ヒトラーの人生をざっくり表にしたので確認しておきましょう。
子ども時代 | ・特に能力も無く、落ちこぼれる。 ・父は自分と同じように公務員にしたかった。 |
アーティストを目指してホームレスになる | ・30歳頃までニート。家族のすねをかじって生活している。 ・絵を売って日銭を稼ぐが生きて行けずにホームレスになる。 |
従軍 | ・第一次世界大戦勃発。 ・戦争での経験とドイツの敗戦が彼の人生に多大な影響を与える。 |
政治家になる | ・怒りのエネルギーで、人の怒りを煽る才能があった。 ・自己確信力が強い。 |
自己確信力と怒りによるエネルギー
ヒトラーはどのような人だったのか、各エピソード#毎に順を追って見ていくわけですが一言でいうと、彼は芸術家基質の偏屈者であり、政治家という感じでは無い。
結果からいうと彼は画家になれず、ひょんなことから政治家になって行く人生を歩むのですが、当初は画家を目指しておりそこそこ上手な絵を描いています。
そして、彼は性格が偏屈で基本的に「怒り」によってエネルギーを生み出しています。
彼は子ども時代から基本的に落ちこぼれで能力が無い。
しかし、怒りによるエネルギ-で、人の怒りを煽るという点においては才能が凄まじかった。
そしてもう一つ、彼は「自己確信力=自分を信じきる力」が強い。
要は、自分が言っていることを疑わず、間違いとも思わない。人の意見に迎合する事も無く、自分の意見を曲げて妥協することもしません。
視野が狭く一方向に対して突き進む力と人の意見を受け取らない力がすごくあるわけです。
このように彼は、実力やシステムでは無く思想で人を動かすタイプという、宗教家の様な側面を持っている。
しかしシーズン7 世界三大宗教、に出てくる仏陀たち教祖は自分の思想を持っていたのに対して、ヒトラーには自分の思想が有りません。
『我が闘争(マインカ)』の内容では、同時代の少し前の人の思想を継ぎ接ぎしており彼自身のオリジナリティが無いわけです。
2つの疑問に注目
ヒトラーは、この時代でなければ有り得ないキャリア形成をしています。
彼は30歳まで落ちこぼれのニートで、何の実績も無く突然政界に現われて、第二次世界大戦を起こして世界中を巻き込んであらゆる大惨事を起こします。
それほど社会に影響を与えた人間が、なぜ何の実績も無く突然現われ首相になったのか。
そしてもう1つ、大量虐殺で有名なユダヤ人の迫害について。
これは、近代国家、民主主義国家であるドイツで国家的に起きておりヒトラーが自分で殺しているわけでは無い。
要は、国全体に仕事としてユダヤ人の大量虐殺をするという仕事を渡してそれを忠実に遂行した結果である。
では、なぜそのような事が民主主義の近代国家で起きたのだろうか
以上2点に注目して、各エピソード#毎に順を追って解説しているので見ていきましょう。
#40 ヒトラー、30歳・無職・自称芸術家(約18分)
- 幼少気は、叩き上げエリートの厳しい父と、過保護な母の間で育つ。
- 厳しい父が亡くなり、落ちこぼれのまま学校を辞めてニート生活、そしてホームレスになる
- 第一次世界大戦が勃発。その経験が彼の愛国心を満たし、軍隊で初めて生きがいと居場所を見出した。
- ヒトラーがナチスを創ったわけでは無い。敗戦後の反動、怒りのエネルギーからナチスが生まれてくる
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ヒトラーの子ども時代の生い立ち~重要なターニングポイントとなる第一次世界大戦をきっかけに彼が居場所を見つける所までみていきます。
ヒトラーの生い立ち、厳しい父と過保護な母に育てられる。
早速ですが、子ども時代のヒトラーは落ちこぼれでした。
叩き上げエリートで厳しい父と過保護の母の間で育つという幼少気を過ごします。
以下に、父と母について簡単にまとめているので確認しておきましょう。
父親 | ・小卒で学歴はないけれど優秀。恵まれない環境から頑張って公職についた人。 ・税官吏という税務を担当する役人として出世して厳格で厳しい人 ・体罰もしており、ヒトラーを公務員にするため実務系の学校に通わせる ・ヒトラーは『我が闘争(マインカプ)』中で尊敬していると言っているが色々なコメントを集めたものをみると嫌いらしい。 ・ヒトラーが16歳頃に亡くなる |
母親 | ・愛情深くめちゃくちゃ過保護な人 ・ヒトラーの前に3人の子どもが居たが、1年間の間に3人とも病気で亡くなる ・ヒトラーも母を愛しており、『我が闘争(マインカプ)』にも記録されている。 ・ヒトラーは最期に地下壕で自殺するがそこに母の肖像画を飾り、別荘にも飾っている。 |
学校を辞めてニートからの、ホームレス生活。
彼は元々芸術系に興味があったのだけれど、父の影響で無理矢理実務系の学校へ通っており、ヒトラー自身、学校に興味が無いし家からも遠いなど様々な理由から、友人が作れ無かった。
こうして小学校から成績が悪く落ちこぼれで人間関係も作れない状態の中で、彼は教師のせいであるという風に責任転嫁していたらしいことから、既に彼の特徴である「怒り」の片鱗を示してる様に感じます。
そして、16歳頃の時に父が亡くなり、学校に通う理由が無くなった彼は学校を辞めて母や叔母さんのすねを囓りながら2年間程ニート生活を送ります。
彼は学校を辞めた後に、元々は芸術に興味を持っていたので絵を描いたり劇場に行ったりする生活を送るのですが、訓練では無くて赴くままに描いて辞めるなど努力をしません。
なので、好きだから描くので上手にはなるけれどそんなに上手くならない。また、幼少気に人間関係を築けなかったからだろうか人物画が描けず建物を描いているという特徴を持つ。
また彼の人生の特徴として、母以外から愛情を注がれるという経験がとても少ない。そして、恋人や愛人のゲリやエヴァとの歪な恋人関係を築いていたりする。
以上の様な感じで、働きもせずに人の金でオペラなどを見に行っては、芸術の評論をします。
自分は何も出来ないくせに、評論家気取りで頑張っている人をボロクソ言って非難するということをしていて、落ちる所まで落ちた結果ホームレスになります。
以下、ウィーン芸術アカデミーでのエピソードを紹介します。
ヒトラーは学校を辞めた後にウィーン芸術アカデミーという所に入りたいと思い、ウィーンに行きます。
受験するために叔母さんのお金で事前にそこに住み、絵を描きながら叔母さんにお金を借りて暮らします。
※ちなみに、借りているのが¥1000万位で2年間程度自由二暮らせるような状態です。この時のヒトラーは、ウィーンアカデミーに絶対受かると確信しています。
要は、自己評価では能力が高く才能に溢れているので落ちる訳が無いと思っているわけです。しかし、結論から述べると2回落ちます。
彼の人生において数少ない友人クビツェクと共にウィーンアカデミーを目指しますが、ヒトラーだけが落ちて、クビツェクは受かる。
そして、プライドの高いヒトラーはクビツェクと縁を切るに至り。2回目の挑戦も落るわけです。
※ちなみに、この時も自分ではなくてウィーンアカデミーがダメだと責任転嫁している。
こうして、自分は出来ると信じているけれどそれを認めてくれない世の中が悪いという典型的ニート発想(既に述べた彼の特徴である自己確信力の強さ)で20代を過ごし、友人無し・学校落ちて仕事出来ない・家が無いというホームレス状態にまで落ちます。
ちなみに、お金の問題ではなく兵疫を逃れるために意図的だったので無いかという説など色々あるが今となっては分かません。
このまま何も無ければ、歴史に残るような人物にはなっていないはずですが、ここで彼にとって転機が訪れます。
それが、皆さんご存じの第一次世界大戦です。
世界史上すごく重要なターニングポイントとなるこの大きな戦争はヒトラーの人生に多大な影響を与えました。
重要なターニングポイント、第一次世界大戦に突入。
まず始めに、第一次世界大戦と第二次世界大戦という連綿と続く1つの大きな戦争について、戦争突入時の人々は当然かもしれませんが皆これほど長く大量に人が死ぬ戦争をすると思っていなかった。
なぜなら、それまでの戦争といいうのは騎馬部隊などがぶつかって1~2割死んだら解散する。こういう戦争のしかたでした。
要は相手が全滅するまで戦うという概念では無かったわけです。
しかし、この世界大戦から機関銃(マシンガン)など大量殺戮兵器の開発に技術が追いついてしまった。
これにより、1師団を数分で壊滅させてしまうことが出来るという、それまで有り得なかった事が可能になり、戦争の規模・概念が大きく変わってしまったわけです。
世界大戦が始まるまでヨーロッパでは100年位戦争が起きていないため戦争を知る世代がおらず、世界大戦が起きているような教育も受けていないので、祖国のために頑張るというある種お祭りのように楽観的感覚で戦地に赴いていたそうです。
しかし、当然ですが戦地では悲惨な現実が待っています。
まずは、塹壕戦により戦争が長期化し泥沼化します。
要は、機関銃により人が死に過ぎるので塹壕といって穴を掘って隠れながら少しずつ進むようになります。
これにより戦争が長期化し、塹壕の中で寝泊まりするので湿気の高い泥の中で寝てしまい足が腐ったりします。
そして、戦争の長期化と大量死という状況を世界が初めて経験しているので皆辞め時が見つからず、辞められないわけです。
そして、塹壕戦を終わらせるためにもっと人を倒すため、戦車・飛行機による爆撃・毒ガスといった大量殺戮兵器がたくさん出てきて泥沼化していくわけです。
ヒトラー初めての成功体験
第一次世界大戦の経験と敗戦という結果は、ヒトラーの人生に多大な影響を与えました。
ヒトラーは戦争で初めて共通の目的を持って友人やチーム組織で働くというように、何かに帰属するという経験をここで初めてします。
そして、彼は祖国の為に頑張るという事に対して凄く志向性が高く、命がけで頑張るので、昇進するには至らなかったけれどこれまでと比べると初めて認められます。
要は、彼にとって初めての成功体験が第一次世界大戦だったわけです。
これまで、ずっと虐げられ・認めたれず・結果も出せずにいた彼にとって初めての成功体験が第一次世界大戦であり、
軍隊の中で戦争で頑張れば自分が自分でいられると自己肯定してしまい、そこに自分の居場所を見出してしまう。
敗戦と怒りのエネルギーからナチスは生まれる。
結論からいうと、戦争においてドイツはフランス、イギリスに負けます。
フランスはドイツを2度と戦争の出来ない国にするために、国力を削れるだけ削ろうという思想で、ベルサイユ条約をドイツに課します。
そして、ドイツは帝国から共和国になり共和制(民主主義)になります。
具体的には、ヴィルヘルム2世という皇帝がいるドイツ帝国でしたが、ワイマール(ヴァイマル)共和国を作り、そこで共和制にして民主主義する。
そこで、物凄く不平等で凄まじい賠償金を課してドイツを再起不能にしようとしてめちゃくちゃにしてしまいます。
これに対して、当然ドイツ人は怒るわけです。そして、この反動から生まれるのがナチスです。
ヒトラーがトップなのでナチスはヒトラーが創ったと誤解されているようですが、ヒトラーが創ったわけでは有りません。
ヒトラー7番目位のメンバーで、は途中からナチスのトップになっており創ったのは別のでした。
ナチスは世論に支えられて権力を握っていく。
要は、民主主義の中でナチスは独裁政権になっていくわけです。
具体的には、順番に以下エピソード#で解説しているのでぜひご覧頂ければと思います。
タイミング良く時代背景が絡むことでヒトラーだけが歴史の重要な要素として捉えられるけれど、必ず時代背景もセットになっています。
その時代背景があるからこそ、ヒトラーが歴史の中でその存在に役割を持たされているという考え方もあるわけですので、歴史を知る時は時代背景もおさえておくと良いでしょう。
#41 ヒトラー。開花する演説の才能(約19分)
- 第一次世界大戦の敗戦国ドイツは領土や植民地など国力を削られ、凄まじい額の賠償金を課された
- 戦後のドイツはハイパーインフレによって経済システム、社会保障が崩壊して希望が見えない状態に追い込まれる
- 終戦後ヒトラーは弁舌(スピーチ)の才能を見出され、軍隊の中で教育将校としての役割を担い才能を一気に開花させる。
- ヒトラーの人生における特徴は私利私欲の無さ(全体主義的な思想)
- ホロコーストに至る要因には、反ユダヤ主義思想・優生学・社会ダーウィニズムが学究的領域から取り入れられ理論武装されてしまった事がある
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前回は、ニートだったヒトラーが自身の居場所を見出す所までをみてきました。
その続きになります。
全体主義
世界大戦自体は終わりますが、
- 敗戦という事実
- 国として不平等で莫大な賠償金を課してくる戦勝国に対して
- 新しいドイツ(ワイマール共和国)という政府が不甲斐なく平等条約を結ばされ文句も言わず、絶望的状況に突入していく中で何も出来ないこと
これらに対してヒトラーは物凄く怒ります。
主語が国になっており、ヒトラー個人としての感情ではない所に彼の全体主義的思想の特徴が見られます。
彼は国と自分を同一視して行くので全体主義と言われるわけです。
要は、国と個人がないので国のために全て奉仕しなければいけないという考え方なので、資本主義の逆です。
資本主義はもう少し自由にそれぞれが私有財産を認めているので、この逆が全体主義に当るわけです。
敗戦国ドイツの絶望的状況
戦争に負けたドイツはハイパーインフレにより経済システム、社会システムが崩壊し、大量の失業者、自殺者が出る。そして、賠償金額が莫大で払えない。
こうした状況が続き、どんどん希望が失われていってしまいます。
パンを1個買うのに¥1億円が必要になったりします。要は円の価値がほぼ無くなり紙くず同然になるわけです。
なので、年金なども元々の額が決まっているので貰ってもほぼ意味が無い状態となり、経済システムが崩壊しており、失業者や自殺者が大量に出る絶望的状態。
こうした、絶望的状況を生きた子ども達が後にナチスに入っていくわけですが、第一次世界大戦収束直後の彼らの経験というのが、
- 父は戦場に行き亡くなります。
- 戦争中は貧しくなっていくので、約3割の人が栄養失調になるほどご飯が食べられません。
- 自分が子どもの頃にいざ戦争が終わったと思ったら負けてます。
- 莫大な賠償金を課されてまともに仕事が出来ません。
- 自分が大人になっても就職できません。
こうした人生を歩まされていくわけです。
こうした彼らの世の中に対する怒りが全てナチスの中で昇華されていくわけです。
ヒトラー弁舌(スピーチ)の才能開花
上記のような状況(時代背景)の中で、終戦後もヒトラーは軍隊に残ろうとします。
終戦後に軍隊は解散されるけれど、軍隊自体が0になる事は無いので1部残ります。
その際に、辞めても仕事が無いからなのか、彼が唯一認められた職場だったからなのか、理由は分からないけれどヒトラーは軍隊に残るという選択をするわけです。
そしてこの選択が彼を後に政治家にしていきます。
軍の中で上司がヒトラーの弁舌(スピーチ)の才能を見出します。
そして、終戦後の軍隊で兵隊にナショナリズムを叩き込む教育将校(軍隊の中での教師)としての役割をヒトラーは担わされることになり、そこで才能が開花する。
既に述べたようにドイツの若達は絶望的状況を強要されてきた時代背景があるので彼らにとって、希望も何も無い所で虐げられている中で、どこにぶつければ良いのか分からない怒りの矛先を示してくれたのがヒトラーというわけです。
こうした彼らの気持ちを代弁してくれて自分達が本当は優れた民族であるとヒトラーは言ってくれる。そして、これが誰のせいかという話から不平等なベルサイユ条約を守る必要は無いので無視しようという事をヒトラーが言ってくれるわけです。
この時と完全に一致するわけでは無いが、似た事を様々な演説で言っており動画で見ることができる。
以下、確認したい方はこちらを参考にどうぞ。(1分27秒~ヒトラーしゃべり出します)
ヒトラーの特徴、私利私欲の無さ
彼の人生のを通しての特徴は私利私欲の無さです。
既に述べているように、彼の思考は全体主義的であり、国家の為に義務感で行動しています。
詳しくは後に述べますが、ユダヤ人の殺戮なども国家の為に義務感で行っているからこそ危ないわけです。楽しんでやっているわけではありません。
これまでの歴史の人物は権力を握ると自分の私利私欲の為に金を使ったりする。
しかし、ヒトラーは首相になり権力を握っても給料も貰わず『我が闘争(マインカンプ)』の印税だけで生活しており金や物に対する執着が殆どない。
まさに、彼の人生は政治だけであり全てがドイツの為にある。
彼は一般的には悪者として解釈されることが多いけれど、一個人として改めて見ると彼の正義は貫いているのが分かって貰えたかと思います。
そして、善悪や正しさとは後にどう捉えるかという解釈であり、現時点での正しさとは何か非常に難しく分からない複雑なモノであることが理解できたのではないだろうか。
甲子園を目指し努力する野球部で「自分達はダメだ」というようなネガティブな発言や空気が流れた際に、監督が「こらっ!お前達!!」と叱咤激励する。
そして、結果として勝てればその叱咤激励はプラスに働いたといえるが、負ければ怒鳴り散らしマイナスへ働いた改善の余地ありと解釈される。
こうした状況の中でヒトラーは教育将校として弁舌(スピーチ)の才能を開花させていきます。
彼が授業の中でナショナリズムを語り、自身が普段から思っている事を話し兵隊を教育する。
そこには、いわゆる右派的な考えを持つ教授達もおり、その考え吸収していき『我が闘争(マインカンプ)』の中に書いてある思想の根幹になっていきます。
それまでヒトラー自身も色々な説を持っていたけれど人の考えを吸収することで、彼は自身が最期に亡くなるまでの理論を殆ど確立したのではないかという風に言われている。
以下では彼の考えについてどんなものがあるのか深掘りしていきます。
ヒトラー思想(人種差別と優生学)
彼の考えの中でまず特徴的なのが「ドイツ民族アーリア人種に対する信仰」要は人種差別です。
これは、人種的差別で血に対する差別なので人の能力に関係無く、生まれつき既に生きるに値する人間かどうかが決まっているという判別の仕方をします。
そして、当時は優生学という学問があり、人間には優劣がありそれは遺伝子によって決まっているという風に学問的に勃興してきてしまった。
要は学究的領域から取り入れてしまい理論武装されてしまい、理論的に反論することが当時は難しかった(出来なかった)。
なので、ヒトラーはアカデミック(学究的)な文脈でユダヤ人を差別します。
これは相当にまずい状況です。
なぜなら、組織や教育が良く無いということであれば、それを変えれば良いので絶滅させる必要は無い。
しかし、ユダヤ人という人種(血)に対する差別であり根拠があってしまうので、ユダヤ人に何を施しても改善出来ない。
だから追放するしかない。けれど追放するには限度がある。だから殺すしか無い。
こうして、最終的にホロコーストに至るわけです。
とはいえ、当時の人達でも最初に賛成してる人は1~3割程度しかおらず、流石におかしいと思っていたようです。
当然、ユダヤ人と共に普通に生活しており、友人や親戚がユダヤ人であるという人もたくさんいるので「差別はしもいいかもしれないけれど、絶滅までは行き過ぎではないか」ということになるわけです。
しかし、なぜかどんどん主要な意見になっていきます。
以下その流れの可能性を詳しく見ていきましょう。
社会ダーウィニズムという考え方
後に詳しく述べますが、従来から元々ユダヤ民族に対する差別はヨーロッパ中で行われていました。
そして、以下3点が全てアカデミック(学究的)領域からきていることがホロコーストに至る主な要因と考えられるので確認しておきましょう。
・反ユダヤ的思想(後に詳しく解説)
・優生学(反ユダヤが遺伝子によって既に決められているという考え方。上記参照)
・社会ダーウィニズムという考え方(以下解説)
社会ダーウィニズムとは、社会というのは発達段階があり優れた社会と未発達の優れていない社会があるという考え方です。
これは、植民地支配するヨーロッパが持っていた考え方である。
例えば、アフリカ民族などが日本人に対してアジア社会が進んでいないので植民地にすることで発達させてあげるという上下関係のある考えかたです。
現代では社会人類学の領域の中で否定されており、それぞれがそれぞれの発達をしているという考え方になっていますが、
当時は社会ダーウィニズムという考え方が主流であり、これが侵略により植民地化していく事を正当化する考え方に繋がっていきます。
ちなみに、優生学ではスラブ民族(ロシア人)も差別しており、劣ったスラブ民族を奴隷にして植民地にするとう考え方をヒトラーは持っていたようです。
要は、ロシアに領土を拡大してそこにドイツ民族を住まわせてスラブ民族(ロシア人)は奴隷にするという考えです。
根拠無き支持の暴走
優生学や社会ダーウィニズムという考え方による差別について、今聞くととんでもない事だと思うけれど、当時は真面目にそう思っていた人達がたくさんいた。
今でも都市伝説レベルの事に対して根拠を見出すことが出来ないにも関わらずに、絶対そうであるというような人達がいるけれど、当時もこのような感じだったのだろうと思う。
当時の例でいうならば、
「ユダヤ人が世界を牛耳っており、戦争を起こしたのもユダヤ人である。ユダヤ人のせいでドイツは敗戦し、それは彼らに既に仕組まれていたことであり、賠償金が莫大なのもユダヤ人がそうしたからだ」
当時、こうしたことを言っている人達がいてその一派がヒトラーだったわけです。
もちろん、全ての事柄に対して絶対的な根拠を求めるのは難しく、可能性としてはあり得るのならばそれを想定すること自体は悪くないと思う。
しかし、それらしい根拠が無い状態で鵜呑みにしてしまうということは、信じたいから信じているという願望であり現実を直視できていない状態だということは理解した方が良いのではないだろうか。
現代の例でいうならば、
ホリエモンや西野さんなどです。彼らの意見や発信に対して批判や賛同など色々あるだろうけれど、彼らが「未来はこうだろう」と示していることに対して絶対的な根拠を求めるのは難しいわけです。
要は世界はこうなのではないだろうかという説を持つ事は良いけれど、それを根拠の無い状態で熱烈に支持しすぎると暴走していますよ。というお話。
つまりは、今も昔も人間というのは自分の感情やエネルギーのはけ口を求めており、その拠り所が必要なのではないだろうかと思う。
(シーズン7三大宗教でも少し触れているが)それが昔は宗教によるお墨付きであり、現代では科学や尊敬する人、メンターといったモノに置き換えられてきた。
形は変化したかもしれないけれど、本質的にはあまり変わっていないのではないだろうかと思いました。
#42 ヒトラーが弱小政党ナチスに加入したわけ(約14分)
- ヒトラーはナチスの前身となるドイツ労働党に入党することになり、軍人からインフルエンサーになっていく
- ヒトラーの加入により、小さな政治団体に過ぎなかったナチスの支持者が増える。
- ドイツ国民の世論(絶望や怒り)がナチスの台頭を支え、そこそこの人気を獲得する
- ヒトラーの演説は計算されたパフォーマンスであり、聴衆の怒りや愛国心を刺激するための戦略的に作られた雛形に沿って行われていた。
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前回は終戦後のヒトラーが才能を見出された所から、彼の思想について深掘りしました。
今回はその続き~彼がナチスの党首になる所まで見ていきます。
ヒトラーはナチスの前身ドイツ労働者党に入党する
まずは、元々軍人として教育将校をしているヒトラーがこの後ナチスの前身となるドイツ労働者党に入党します。その経緯について以下みていきましょう。
ヒトラーには軍人として2つの任務を任されます。1つは既に述べている教育将校としての役割。2つ目がスパイ的活動です。
どういうことかというと、右派団体や左派団体など色々な団体がミュンヘンという場所で活動しているので国家としてそれらを監視するよう指令が出たわけです。
こうして、ヒトラーは監視するスパイのような立ち位置でドイツ労働者党を見に行きます。
ドイツ労働者党の党首はアントンドレクスラーという人です。
そして、彼の思想に準ずる人達を集めて講演などの活動をしているで当然ヒトラーも監視を目的に行くのですが、そこである出来事がおきます。
集会にて議論をしており、党首側の(右派)の誰かの意見に対して、左派の人が反論しました。
これに対して、スパイとして監視目的で訪れていたはずのヒトラーが反論し議論してしまいます。
そして、ドイツ労働党側で左派の人を論破します。
この出来事をきっかけに、ヒトラーはアントンドレクスラー(党首)にスカウトされます。
そして、ヒトラーは上司と相談の上でスパイといいう立場のまま内部に入ることになり、そこで頭角を現した結果ドイツ労働党の党首になっていきます。
軍人を辞めてインフルエンサーへ
ベルサイユ条約により軍隊を減らすように言われておりヒトラーもずっと軍隊には居られません。
1~2年後には辞めなくてはならないので次のキャリアを考えている時、ゴットフリードフェーダーに出会います。
ゴットフリードフェーダーはユダヤ人を批判する学者です。彼の講演でヒトラーは才能を見出されスカウトされる。
そこでヒトラーはしゃべる仕事をします。ここでも、政治は喋るのが仕事なのでヒトラーの才能にマッチしていました。
彼は喋りで寄付を募るというのがうまく、どんどん支持者を集めまさに適任でした。
こうして、ヒトラーが喋るようになってから、色々な人が入党し寄付も集ることで、田舎の小さな政党がどんどん大きくなっていきます。
まさに、フォロワーを集めるインフルエンサーになるわけです。
他の人達が働きながら党の活動をしている一方で、初期段階のヒトラーはまだ軍隊からお金を貰っていたので働かずに党の活動に時間をかけることができた。
こうした環境が揃った結果、ドイツ労働者党におけるヒトラーの立ち位置が強くなります。
要は、人も金も殆どヒトラーが集めているので自然と党首として認められていくわけです。
当時、右翼政党が乱立しており合併する動きがあったので、アントンドレクスラー党首も合併しようとしていました。
しかし、ヒトラーは自分達の政党の考えを一切曲げたくないので合併に反対します。
もし合併するなら、もう辞めるよ?
辞めるとか冗談でしょ。合併します。
マジで辞めちまたよ…あのカリスマ演説家のヒトラーがいなければ、これ以上の人も寄付金も集まらんぞ。
すみませんでした。戻って来て下さい。
じゃあ僕に権力頂戴。僕が色々決めても良いなら戻るよ。
(まさかヒトラーがその後も権力をどんどん握るとは思っていないので)ちゃんと成績出しているししょうが無いな。権力をどうぞ。
ここでナチスとして作り直すわけです。
ナチスを作った時に25ヶ条の網領というものを出します。要はナチスがどういう思想を持っていのかということになるので以下詳しく見ていきましょう。
ナチスの思想について
ナチスがどういった思想を持っていたかというと、既に述べていたヒトラーの思想とほぼ一致しますが大きく分けて3つあります。
以下、簡単に表にまとめたので確認しておきましょう。
➀自立 | ・これはヒトラーが作った思想で、ベルサイユ条約をぶっ壊しましょうという話です。 ・ナチスのドイツ民族自決権と領土獲をするというう考え方があり、フランスやイギリス、ベルサイユ条約で結ばれている自分達で色々決める権利が無い現状を脱しましょうということを言っている。 |
➁国民の新たな定義 | ・これもヒトラーが作った思想で、ユダヤ人は国民では無いと定義しています。 ・外国籍の者(外国人)として扱い、同じ権利を与えないということを言っています。 |
➂奪われた領土を戻す | ・自分達には植民地を持つ権利があるという話から植民地を復活させろという話をしている。 ・領土をいくつか奪われているのでそれを戻すという話です。 |
ターゲットは所得中間層。金持ちや不労所得は全体主義に反しており批判される。要は不労所得をもっている人はぶっつぶそうという話をしている。 |
簡単にまとめると、「ベルサイユ条約は不当だ」「ユダヤ人はダメだ」という2つの大きな主張があり、これがヒトラーのやりたかったことです。
そして、ターゲットの中間層については、支持集めの戦略であり手段です。
要は、最初の2つの思想を持って大衆にヒトラーが演説していくわけです。
ヒトラーの計算された演説
ヒトラーの演説は身振りや手振り、喋り方までほぼ全てが戦略的に計算されたパフォーマンスであり雛形があるので見てみましょう。
彼の演説における特徴は世界を善悪の2項対立で捉える。
要は、怒りを煽る喋り方で大衆を魅了するというのが彼の常套手段です。
簡単にまとめると【共感】→【敵の提示、出現】→【怒り】の順で喋ります。
現代風にまとめると【現状・課題→理由→解決方法(結論)】の構成で喋っていると理解すると、ある意味で勉強になるのではないだろうか。
まずは静かに喋り始め、怒りを見せません。
「何でこんなことになってしまったのか、何でこんな苦境に陥っているのか、どうすれば未来を取り戻せるのか。」こうした話をします。
【敵の提示、出現】
その原因について触れる最中に、誰のせいなのかという風に敵を提示します。
このタイミングで少しずつ怒り始めヒートアップしていきます。
そして世界を善悪の2項対立で捉え、「悪い奴がいて自分達は正義側である、悪い奴を倒すことで世界は良くなる」という話をします。
【怒り】
世界を善悪の2項対立で捉えて話す事で、聴衆も自ずと悪い奴に対する怒りが沸いてくるわけです。
実体験として聴衆は大変な状況にあり、当時はこうした教育をちゃんと受けられていない人が多く収集できる情報も少ない。
こうした中で理論立ててアカデミックな裏付けも示しながら悪い奴は●●だと言うので、聴衆もそうなのかもしれないと思ってしまうわけです。
これら戦略的に考えられた身振りや喋り方、構成について理解した上で動画で確認したい方は以下を参考にどうぞ。
※参考動画内でヒトラーはちゃんと聴衆が聴く姿勢になるまで待つので1分25秒程度まで無言です。
こうした演説をしていった結果、ナチスの人気が上がってきます。
その後、ナチスが第一党になっていくのですが軍事力による暴力やクーデターではなく、民主主義的な選挙によって民衆の心を動かし独裁政権を築きます。
以下では、どういう風にナチスが第一党になっていくのかその様子を見てきましょう。
#43 ヒトラー・民主制が生んだ独裁者(約18分)
- クーデターに失敗したヒトラーは反省し、民主主義的な選挙による政権奪取に方針転換する
- 弁士養成学校を作り演説スキルに力を入れたり、メディアを使ったプロパガンダ戦略などによりナチスは支持率37%まで上げていく
- 民主主義に反対の立場をとるヒンデンブルク大統領の選択が、ヒトラー独裁へ押し上げる要因となった。
クーデタ-を起こすが失敗する
早速ですが、既に述べているようにドイツはフランスから莫大な賠償金の支払いを命じられています。
しかし、これをドイツが支払えないのでフランスが怒り、ドイツの工業地帯という稼ぎ頭のような所を無理矢理奪います。
要は現物で差し押さえしたわけです。
最終的な結果としてヒトラーは民主主義により権力を獲得するのですが、元々はクーデターを起こすことが党の目的です。
なのでヒトラーは、フランスによるルール工業地帯占領という大事件で皆が沸き立った時にクーデターを起こしました。
この時、そこそこ支持者もおりボランティアで1000人の軍隊を持っていたので、ミュンヘンという場所でミュンヘン一揆というクーデターを起こします。
※フランスではなく、政府に対してクーデターを起こしています。
結果クーデターは失敗に終わり。当然、国家に対する反逆罪としてヒトラー投獄されます。
ちなみに、ヒトラーの有名な著書『我が闘争(マインカ)』は投獄されている間に書かれています。
投獄されるが、人心掌握術により右翼をまとめる
こうして、ヒトラーが投獄されている間にインフレも治り失業率も一度良くなったりしています。
そして、投獄が決まる裁判が行われアントンドレクスラーなど一緒に首謀した当時の党幹部の人達は、判決結果によっては自分の身が危うくなり死にたくないので怯えています。
こうした状況の中で、本当は色々な首謀者が一緒に共同しているクーデターだったのだけれど「全部自分の責任でやった」とヒトラーは言います。